読書感想や思っていることを話すブログ

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【個人的読書感想文】白鳥とコウモリ 東野圭吾

遺体で発見された善良な弁護士。、一人の男が殺害を自供し事件は解決――のはずだった。
「すべて、私がやりました。すべての事件の犯人は私です」
罪と罰の問題はとても難しくて、簡単に答えを出せるものじゃない」
 ◇
殺されていい人間などいないだろうが、白石に肩入れしてしまうほど灰谷が憎い。
それが因果応報今度は14歳の子の手に掛かる事になるなんて…しかも悲しいかな動機が歪んでいる。
倉木の覚悟には共感は出来ない私だが、いつか和真と美令が笑顔で寄り添える日がくることを願っている。
  ◇

交通事故を会社に報告したくなかった倉木達郎。
自分の所為で無実の福間を自殺に追い込んでも善良な弁護士として成功を収め家庭をもった白石健介。
冤罪を誰よりも憎んでいたはずなのに我が息子の行いを黙認した浅羽織恵。
誰かを守る代償として誰かが傷つく負のスパイダル。
罪と罰の問題を乗り越えて2人には幸せになってほしい。
  ◇

倉木さんの考えていた罰は切なすぎる。、真実を追求し、辿り着いた先にあったものが思いがけないものだった美令と和真。
ラストの二人も良かった。でも切ない。
 

◇ 

印象に残ったところ

「なぜ、あなたは『あすなろ』に行くんですか?
そのことを息子さんに隠している理由は何ですか?
それだけじゃない、あなたは浅羽さん母娘にさえも隠し事をしていますね。
自分が、三十数年前に起きた『東岡崎駅前金融業者殺害事件』で痛いの第一発見者だったことを隠していますね。
それはなぜですか?」
「倉木さん…」
「もういいです」
倉木が五代たちのほうを向いた。
五代は、はっとした。先程までとは比べものにならないほど穏やかな顔をしていたからだ。
「すべて、私がやりました。すべての事件の犯人は私です」
「すべてって…それはもしかすると」
はい、と倉木は頷いた。
「白石さんを殺したのは私です。そして灰谷昭造を刺し殺したのも私です」

p95
倉木の供述は多くの疑問に答えてくれるものではあった。
しかしひとつだけ、大きな謎を残している。

なぜ倉木は三十数年前に逮捕されなかったのか、なぜ容疑の対象から外れたのか、ということだ。
本来、事件の第一発見者は、真っ先に疑われるのが普通だ。
だがそれについては倉木自身も、わからない、と答えるばかりだ。

自分たちは本当に迷宮入りを免れたのだろうか?
もしかすると新たな迷宮に引き込まれたのではないか?

p291
「どんな犯人だって、なるべくなら刑は免れたい。そのためなら、あれこれと嘘だってつくだろうさ。
じゃあ、倉木はどうだ?あの人物が嘘をついているとして、それは何のための嘘だ?
減刑には繋がらない。それなのに、なぜ嘘をつく?」

p391
「被害者の遺族と加害者の家族が協力して情報交換しているなんて、普通じゃちょっと考えられないですよ」
中町は頭を左右にゆらゆらと揺らした。
「その通りだが、あの2人の場合は特殊なんだよ。理由がある」
「何ですか、それは?」
「どいらも事件の真相に納得していないってことだ。もっと別の真実があり、それを突き止めたいと思っている。
ところが警察は捜査を終えた気でいるし、検察や弁護士は裁判のことで頭がいっぱいだ。
加害者側と被害者側、立場上は敵同士だが、目的は同じ。ならば手を組もうと思っても不思議じゃない」

「光と影、昼と夜、まるで白鳥とコウモリが一緒に空を飛ぼうって話だ」

 

p418
「他の犯罪ならともかく殺人事件だ。裁判で死刑になるかもしれない。そんな罪を他人の代わりに被る人間がいるなんて、普通は思わないよ」
「そうです。問題は、なぜ倉木はそこまでするのかということです」
五代は液晶モニターに目を向け、キーボードを操作して映像を戻した。ある人物が横顔を見せている。
その人物の写真を見たのは、浅羽母娘の部屋に行った時だ。小学生時代の姿が写っていた。
少年の名前は安西知希、父親の安西弘毅によれば、中学二年生ということだった。

 

p499
「捜査を混乱させるためですね。車を移動させれば、子供の犯行だとは普通思わない。白石さんは最後の力を振り絞って、安西知希を守ろうとした」
「倉木氏もそう考えた。白石さんは、安西知希を守ることで過去の罪を償おうとしたんだと。だからこそ倉木氏は、その意図を尊重しようとした」

 

p507
「殺人に興味があったというのです」
女性弁護士の言葉を理解するのに、ほんの少し時間がかかった。数秒の沈黙の後、えっ、と発した。
「興味?」
佐久間梓はゆっくりと頷いてから、改めてファイルに目を落とした。
「小学生の時、祖父が殺人犯だったことが周囲に知られ、いじめられるどころかむしろ恐れられていると感じ、人殺しという行為の影響の大きさに関心を持つようになった。やがては、人を殺してみたいと思うようになった。

倉木氏から母親に送られたメールを盗み読みしたことで、状況が一変した。人を殺す動機を得たと思った。
長年の恨みを晴らすためだったとあらば、世間も許してくれる、刑罰も軽くなるのではないか。
その思いは瞬く間に膨れ上がり、行動に移す原動力となった」